流れるままのミホ

豊島ミホの近況とお知らせ

既刊2冊配信終了と、『底辺女子高生』電子版改訂のお知らせ(2021/11/20)

大変お久しぶりです、豊島ミホです。 このブログ、誰か読むことあるのかしら?! でもここ以外にお知らせするところがないので、お知らせをしにきました。

既刊の電子書籍2冊、『日傘のお兄さん』『陽の子雨の子』の配信を、10月末で終了しました。 そして、『底辺女子高生』の電子版を、2021年版あとがきを書き足した改訂版に……する予定です。こっちはまだだった! 私の作業は終わりまして、版元の幻冬舎さん&各電子書店さんの作業を待っているところです。

いったい何事かというと、「未成年の家出を書いた自著をなんとかしようとした」ということです……。

どこから話せばいいんだ。う~~ん……。 私の最後の紙の著作は、2015年の岩波ジュニア新書『大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル』で、これは私が高校時代にいじめ的なものに遭って作った復讐心などなどのゆくえについて書いたものなんですが、高校時代のことに大きく触れるいっぽうで、家出したことを書かなかったんですよね。この時点でもう、書かないほうがいいなと思ってる。私が元・家出少女だと知られることは全然いんですけど、なんかちょっとでも、「あ、やってる人いるんだ」「案外大丈夫なんだ」って、未成年の読者さんに思われたら困る! と思って、意図的に伏せました。 スマートフォンが普及してから、家出中の未成年が事件に巻き込まれるケースが目立つようになったと感じていて(統計にあたっている時間がなく、これが私の「感じ」でしかないことは書き添えておきます、すみません)。私は大丈夫だったけど、今の子が同じことして大丈夫ではないんじゃない? という意識があった。 でも、過去の著作をどうにかしようとまではその時は思ってなかったです。昔の小説で、今読むと「ありえん!」みたいな作品なんていっぱいあるし。それ見直さなきゃいけなかったら大変ダヨ~……的な。ことを考えてました。ぶっちゃけ、私の本って(おそらくはみなさんがご想像であるように)そんなに動いてないし。『底辺女子高生』はともかく、家出が出てくる小説2冊に関しては年に1桁を絶対に超えないっていう販売部数だし。

その意識がかわるきっかけのひとつが、今年春に『日傘のお兄さん』の二次利用申請をいただいたことでした。 ジャンルは伏せますが、国語教材に一部抜粋とかじゃなくて、ストーリー全体がわかる形のものです。 いやいやまずいですよ、座間事件より後にこれはないよ大炎上だよ。的なことを直にお伝えしてお断りしたんですけど、なんか我ながら、「今より多くの人目に触れたら大炎上」クラスのものを売ってんのって……どうなの?? それ本当に、「昔の作品だから仕方ない」でいいの? って思った! 古本ならいいと思うんですよ。あくまで、新刊では入手できない絶版本として流通してるなら、、、読む側にとっても「昔の本」だし(本自体が物理的にボロくなってますしね)。 紙しかない時代は、絶版本になれば自然と数が減って世の中から消えていってた。でも電子書籍って、絶版がないんですよね。いつまでも新刊同様の値段で販売されてる。読む側が「昔の本」っていちいち意識してくれてるわけではない状態で、ず~~っとある。

これはもう、お願いして電子書籍は下ろしてもらおう。 ということで、『日傘のお兄さん』と、同じく家出を扱った『陽の子雨の子』は販売停止の手続きを取りました。 どういう話でどこがどのくらいダメだったん? ってわざわざ古本で読みたくなる人のためにここではっきり書いときますが、『日傘のお兄さん』は表題作が女子中学生が10歳年上の異性の幼馴染にくっついて家出する話、『陽の子雨の子』は、女子大生が家出少年をかくまって一軒家に同居させ5年が経ち、関係が倦んできたんで新しい少年を巻き込もうとする話。です。前者は性的関係はなし、後者はあり。 「そんな話、昔でもだめじゃない?!!!」って思うよね?! 思う! わたしも! ま昔よかったかよくなかったかは置いといて、なんで「私が」「今」この話をまずいと思うかというと、家出に異性がからむファンタジーだからです。家出それ自体は、最悪仕方ない時もあると思います。自分を助けるためにしなきゃいけないシチュエーションってのがあると思う。でもそこで異性についていくのは……それだけは! だめ! これは私自身のファンタジーなんですよね。家出から帰って来たあと、「あ~あ、誰か男の人についていけばよかった、そしたらもっと家出が続いたかもしれないのに」「そこまで行かなくても思い出が残ったかもしれないのに」って思って、なんか小説にもならないストーリーの断片みたいなものを残した記憶がおぼろげにある……。 家出した子は、やっぱヨシヨシされたいんだよ。家を出てきたから家が欲しいの。それに一番近い(と思いがちな)のは異性関係、恋愛関係。 このファンタジーを持つことは仕方ないんだけど、でもファンタジーはやっぱり、ファンタジーなんだよね……。見ず知らずの未成年を家に泊めたりする大人がそのファンタジーにつきあってくれることは、、、ないんだよ。そこまでは経験したわけじゃないんで言い切るのあれかもしれないですけど、最低でも、そういうファンタジーを持っていることは家出においてリスクでしかないので。そのリスクを万が一にでも人に(読んでくれた人に)持たせることがあってはいけないなと判断しました。

この判断が遅かったこと……本当に申し訳ありません。 さっきは「置いといて」と書いたけど、本当は昔でもだめだったと思う。この話。ただでさえ弱い立場の家出少女・少年に、こういうファンタジーを見せることで、より弱くしてしまっているから。 ただ私自身がそのファンタジーの中にいて危険性に気づかなかった、「あの時、安心できる場所があったらなあ……」「ひとりじゃなかったらなあ……」という気持ちがあってそれを折り込んでしまった。という背景がありました。これも言い訳にすぎませんが。ごめんなさい。 これから先も、自分の考えが変化して「違うな」と思う著作が出てきたら取り下げていくと思います。取り下げに柔軟でありたいです。

最後になりましたが、今まで上記2作を読んで下さった皆様、ありがとうございました。事の性質上、配信終了後の告知になってしまってすみません! 販売終了作品を再ダウンロードできるかどうかは、電子書店によるかな……。自分で試してみたらば、Kindleだと大丈夫(前に買った人は再ダウンロード可能)でした。読む時には「昔の家出少女の夢……」と思ってお読み下さい。 あと、『日傘のお兄さん』の表題作じゃない短編3つのうち、1つくらいは自費出版的なやつ(Kindleの、なんていうんだっけ?)で再出版しようかな~と思っています。

『底辺女子高生』のほうの話が入らなかった。 こちらは書き足しをしたわけですから、なんで足したか、昔とどう意見が変わったかということが書いてあるんですけど、字数的に書ききれなかった考え事を、ここに残しておきたいような~、でもそんな時間は永遠に取れないような~。 久々に読み返して感じたこともたくさんあったので、可能だったらまた別の日にちょこちょこ書き足していくかもしれません。 書き足しがなかった場合も、どこかのタイミングで改訂はあると思うので、しばらくしたら再ダウンロードしてみていただけると幸いです。